楽器が下手な人にしか務まらない役割がある

楽器が下手な人にしか務まらない役割がある

楽器の上手い・下手を比べることそのものには意味はないんですが、大勢で活動する中ではどうしても意識してしまう部分ではあると思います。

例えば、ソロがあったら上手い人、もしくはそのフレーズに音色がマッチしている人がやるでしょうし、(音程が合わない等で)何人かカットしたい場所があれば下手な人が「おまえそこ吹くな」と言われるでしょう。


私たちは人間ですから、本質的には意味がないと分かっていても比べてしまいます。そして、その比較の結果から優越感に浸ったり、劣等感に苛まれたりします。

下手にもいろいろあると思いますが、この記事ではある集団のなかで相対評価した時に下位に属してしまう人を「下手」、と定義づけて話を進めます。

楽器を始めたばかりの人はもちろんのこと下手ですが、そういう「下手」は対象に含めません。

●比較の際に生じる感情にフォーカスする

先にも述べた通り、比較を通して優越感か劣等感を感じます。もちろんどちらも感じない人もいます。

私たちは幼い頃から競争を半ば強いられて生きてきました。幼稚園・保育園ではかけっこがありますし、小学生ではテストや運動会があります。競争ではなくても、給食を食べるのか早い・遅いというところも無意識に比較してしまいます。
恋愛においても、「○○ちゃんより私の方が絶対美人なのにどうして彼氏ができないのかしら」とか「あの美女と野獣カップル・・・許せん!」とかありますよね。

その中で、「おれ、頭は悪いけどアイツよりマシかな。スポーツは得意だし」とか、「私、給食食べるの遅いけど○○ちゃんもそうだから、まぁいいよね。私ひとりじゃないもんね」などと比較によってなにかしら感じてきました。大きく分けて安心か不安のどちらかでしょう。


比較によって安心できるのは自分より劣っている人がいるからですし、逆に不安を感じるのは自分が劣っている側だからです。ケースバイケースですから必ずこうというわけでもありませんが、誰にでも経験のあることでしょう。


楽器の話に戻りまして、相対評価に「下手」がいるということは当然「上手」な人もいます。

下手な人が周りと比べて「私は下手だなあ・・・」と不安になったり自分を責めたりする原因は周りの上手い人にあります。周りも自分と同程度か自分より下手だったならば感じ得ない感情ですからね。逆に「俺、そこまで上手でもないけど、アイツよりはマシか」と思えるのはその「アイツ」が自分より下手だからです。


つまり、下手であることで、誰かを安心させていると言えます。

●下手な人は必要

タイトルは「下手な人にしか務まらない役割がある」としていますが、言ってみれば自動的に担っちゃうんですね。他者に優越感を感じさせてあげるという役割を。

指揮者やパートリーダーに怒られることが続くと結構凹みますが、それを見ている周りの人間の中には優越感に浸ったり「あの子よりマシか」とちょっと安心したり、「ああならないように頑張らないと!」と奮起する人など様々でしょう。

そういうことを感じさせてあげる役割を下手な人は担っています。これはクラブ全体のバランスのために大切な役割です。

●おわりに

練習を積み重ねて上手になればいいに越したことはないのですが、もしも楽器が下手でそのことが原因で苦しくなっている人がいたら少し肩の荷を降ろして欲しいという思いからこの記事を書きました。

比べることには意味はないんですが、コンクール前にオーディションをする学校もあるでしょうし、やはり比較はいろんなところで行われます。それは人々に最高の演奏を聴かせたいからというポジティブな理由ではあると思いますが、比較の結果がダメであってもあまり落ち込まいないようにしてもらいたいと思います。

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