吹奏楽部員の部活と勉強の両立について
中高生は勉強と部活の両立が大切・・・とよく言われますね。私が高校生の頃も勉強との両立が大変という話は周りからよく聞いてました。勉強嫌いだった私には関係のない話に思えましたが、今後のことを考えると勉強はやっておいて損はありません。
クラブ活動に対する思い入れの強さや温度差同様に、勉強との両立をどれほど真剣に考えているか、というのも部員によってそれぞれ全く違います。
私のように「今はクラブ一本だから勉強はそこそこでいいよ」という人から「何としてでも●●大学に受かりたい!そのためにはクラブばかりに集中しているわけにはいかないんだ!」という人まで様々だと思います。
気持ちはどうであっても、勉強が大切というのは一般論でもそうですし、クラブの発展・成長を考えたときにも重要な事項です。
吹奏楽員の勉強と部活の両立についての記事です。
●なぜ勉強との両立が必要?
「文武両道がなぜ必要なの?」という疑問は若い方は特に持っていると思います。
これは大人になっても出した答えが人によってそれぞれ違うので、一般論として示すことは難しいです。
とは言いましても、なにも示さないわけにもいきませんので私の思うところを紹介させてください。
①人生の土台の構築(勉強からの視点)
②他者との協力、達成、感動の経験(部活動からの視点)
③"両立"の立ち回りとその必要性
④大切な話
の四つから見ていきます。
①人生の土台の構築(勉強からの観点)
まずは、なぜ勉強が必要か、という話です。
高校を卒業し、その後の人生を歩む中で"心から自分がやりたいこと"、"人生をかけてでも取り組みたいこと"が見つかるときが訪れます。
これは小さい頃から自分の中で明らかになっている人もいますし、だいぶ年をとってから見つかる人もいます。
このときが訪れるまでに「必要性を感じないから」という理由で勉強をしていないと、やりたいことが明らかになった際のスタート位置に不便を感じることがあるかもしれません。
やりたいことが明らかになったとき、「あの勉強は必要なかった」、「あんなものに時間を費やすくらいならもっとマシな過ごし方ができたはずだ」という感情は出てくると思います。
しかし、これまで蓄えてきた知識のどの部分が役立っていくかは言われるがままに勉強している時点では分かりませんから、ある程度は"目的も分からず勉強を強いられる自分"を肯定したほうが楽でいられるのかな、と思います。
ただ、これでは納得する人はいないでしょう。これでは「いつか為になる日がくるから黙って勉強しろ」と言っているのと変わりませんからね。
ですから、もうひとつ勉強の必要性について考え方を挙げたいと思います。
それは、知識・教養の獲得ですね。
なんでもそうですが、「知っている」というのはひとつの強みであり快感です。
例えば、クイズ番組で答えが分かるのはその答えを「知っている」からですし、詐欺の被害に遭いそうになったとき、騙されずに済むのはその対処法を「知っている」からです。
習い、学んだ際には不必要と思っていても、自分でも自覚しない場面でその知識が生かされることがあります。
ひとつ紹介させてください。村上春樹さんの著書にノルウェイの森 という作品があります。これの下巻に興味深い会話があるんですね。
登場人物の緑が、主人公に「英語の仮定法現在と仮定法過去の違いをきちんと説明できる?」と聞きます。「できると思うよ」と答える主人公に緑はこう返します。
「ちょっと訊きたいんだけれど、
そういうのが日常生活の中で何かの役に立ってる?」
すると主人公は
「日常生活の中で何かの役に立つということはあまりないね。でも具体的に何かの役に立つというよりは、そういうのは物事をより系統的に捉えるための訓練になるんだと僕は思ってるけれど」
と答えます。
どうですか。目の前の勉強を今後役に立つか否かだけで考えるのは少々稚拙な捉え方ではないでしょうか。
次にクラブの観点からお話させていただきます。
②他者との協力、達成、感動の経験(部活動からの視点)
学校では体育祭や学園祭等の行事がありますから、クラス単位でも協力したり達成感を共有するという経験は出来るのですが、クラブの方がもっと強烈にその経験ができます。
なぜなら、クラスに比べてクラブの方が希望して入部したという傾向が強いですし、活動自体も自分の好きな分野だからです。
ここは吹奏楽部に関するサイトですので、その方向で話をさせていただきますね。
吹奏楽部では何百人もの前で演奏したり、踊ったり歌ったり、コンサートの構成について考えたり、集客のために街を回ったり、朝早くから夜遅くまでひたすら練習したり・・・と、ここでしか得られない経験が多いです。
他者との協力はコミュニケーション能力を養うことになりますし、いろんな価値観に触れ、人間としての幅を広げることにもなります。
コンクールやコンサート後の達成感や感動を部員同士で共有するという点でもそれらを促し、今後の自信へと繋がります。
また、こうした経験はこの時(中学・高校)にしかできません。大学でも可能ですが、個々の学業がより大切になってきますし、高校までもより自由が利きますから、アルバイトや恋愛など私生活のいろんなこととの両立が困難になってくるんですね。
大人になって仕事で達成感を得られることもありますが、やはりそれは仕事なんですよ。利益を生み出さなければいけなくてまた、生活がかかっています。
中高生の営利的な目的の一切ないただただ純粋に「いい演奏をしたい」というものとは少し異なります。
ですから、やはり中高生のときにしかできない経験なんですね。部活動というのは。
学業を優秀な成績で卒業するのも十分な強みですが、コンクールやアンサンブルのような上位大会に通ずるもので優秀な成績を収めることもまた後々に役立ちます。
先程は自信がもてると言いましたが、就職活動の際にアピールできるポイントになったりもします。これに関しては頑張った結果の副産物的なものだとは思いますが、そういう場面で役に立つのも事実としておさえておきます。
③"両立"の立ち回りとその必要性
勉強と部活を両立するとなると、その立ち回りが重要です。要は時間と己の管理ですね。
勉強に時間を割きすぎるとクラブで遅れをとりますし、クラブに力を注ぎすぎると勉強がおろそかになってしまいます。
具体案としてまずは、自分の一日の過ごし方を書き出してみましょう。
そして勉強に回せる時間は勉強に置き換えて過ごすようにします。
ただ、これでは足りないという人もいるかもしれませんね。そういう場合はクラブを早退させてもらったり、ある期間休部させてもらうのも手です。
遅れはとるでしょうが、勉強が大切という個人の事情もクラブ側が理解するべきですから、そういう部分を尊重できるクラブ作りが大切になってきますね。
ストレスを解消するための時間も必要ですから、なかなか時間配分は難しいとは思いますが、考えてみてください。
ひとつ注意ですが、「入浴の時間は勉強できない」などと考えるのはよしましょう。今は「風呂単」というお風呂で使える単語カードもありますし、トイレでもドアに紙を貼っておけば勉強にはなります。
場所の都合に自分を合わせるのではなく、自分の都合に場所を適応させましょう。柔軟に対応していく考え方はクラブ活動でもきっと生きてきます。
あとは、部内に勉強と部活の両立がうまくいかないという悩みを持った人が複数いれば、クラブの時間内に勉強の時間をとってしまうのもひとつの手です。自分だけ早退するのは負い目を感じることもあるでしょうから、これならその心配もありません。
部長や顧問の先生に掛け合ってみましょう。
ここまでは、両立の立ち回りについて述べました。ここからはその必要性について述べます。
中高生の時代に文武両道に力を注ぐことが何を意味するか。やはり上手な時間配分や自己管理能力が身に付くことです。
くどいようですが、これもまた自信に繋がるんですね。勉強と部活の両立がうまくいけば、ひとつの成功体験として今後の自信になります。
個人的には「自信がつく」とか「自信が大事」という話はあまり好きではないのですが、それでもこれは事実なんじゃないかと思います。
大人になっても自己管理、時間配分が必要となる場面はたくさんありますから、その訓練になります。これが両立の必要性だと思います
※だからといって両立ができなかった(しなかった)人が大人になったら仕事出来ない人間になってしまうということではありません。あくまで訓練ですし、自己や親が満足するからというのも文武両道に力をいれる理由にはあると思います。
④大切な話
当ページには「吹奏楽部 勉強 両立」などのキーワードで検索して訪れる方が多いです。多くの方が勉強と部活の両立について悩まれているようです。
2009年のベネッセ教育研究開発センターの調査によると、
勉強に専念するために部活動を辞めるのはむしろ逆効果が多いという結果が出たそうです。
これを詳細に説明するにはかなり長くなりますし、図表で示さないと分かりにくいものでもありますので、リンクを貼っておきますね。
→「部活動をやめて勉強する!」は難しい?(外部サイト)
両立がうまくいかないからクラブをやめようと考えている人もいるかもしれませんが、部活動が家庭学習の減少や学習意欲の低下を招いているという状況はないようです。
北海道から沖縄までいろんな中高生の方がいる中で、勉強が好きな人、部活動が好きな人、勉強も部活も嫌いな人などさまざまです。
中学、高校のうちというのはどうしても自分で生き方を選択することが難しい時期です。
嫌々勉強をしている方も大勢いるかもしれませんが、大切なのは勉強でも部活でもなく「生きがい」です。勉強が生きがい、部活が生きがいという人もいるでしょう。
生きがいを探せる環境を整えるのは、大人の課題でもあります。
親や教師など周りの人間が口うるさく言ってくるという人もいるでしょうが、それに従う一方でご自身の考えも大事になさってください。
●おわりに
勉強と部活の両立は難しい問題ですね。
個人的にはそれを理由にクラブをやめるというのはもったいなさすぎると思います。クラブ活動で得られることは大変多いです。
とはいえ、ご自身の納得いかれるように行動するのが一番後悔の少ない方法ではないでしょうか。
自分で行動を選択するというのは大変ですが、同時に自律心を養い大人への階段を駆け上がっていく行為でもあります。失敗を恐れず目の前のことに果敢に立ち向かっていってほしいと思います。
ありがとうございました。